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Pannotia

ヘタリア好きが懲りずに作ったブログ。元Pangea。今回も超大陸から名前をいただきました。 CPは独普・米英米・独伊独・西ロマ・典芬・海拉・英日などなど。NLは何でも。にょたも大好き。史実ネタ時事ネタねつ造たくさん。一部R18あります。 その他作品として、デュラララ!!(NL中心)とサマウォあり。

   

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流れる絵(露と中兄)


 風邪ひきロシアと、出張料理人。(多分、後で金取った)
 よく考えたら、ナチュラルに本家の露が中の料理食べてましたね。






 アメリカや韓国の面倒は自分が見るからと、マスクでけほけほ言う弟に無理やり航空券を握らされた。換金したらいくらになるのだろうと計算しかけて、払い戻し不可の指定チケットですから、と先に釘を刺された。わが弟ながら気が利きすぎる。
 だったら直接お前が世話しろと言いたいが、あの海を渡った先にある空気読めない眼鏡一国でも荷が重いことを知っているので、言い返せなかった。
 自分の役割は決して軽くはないが、だからと言っても頼まれたって弟と役目を交換するのは嫌だ。
 
 国土の広い国は大抵広い一軒家を持っていることが多いが、意外にもロシアはアパート住まいだったりする。モスクワ市内には一軒家用の住宅地はほとんどないためだ。
 以前は、クレムリン内に住んでいたこともあるロシアだったが、社会主義崩壊以降は上司から直接与えられる仕事も少なくなったからか、一人暮らしを始めていた。それは、同居していたメンバーが抜けていたったことと無関係ではないだろう。
 
 50年ほど前に建てられたごてごてしい様式の白い彫刻が施された、フランスが言うには「すごいけど美しくない」アパートは、仕事場から歩いて15分ほどにあった。
 紐育(ニューヨーク)の20世紀初頭に建てられた摩天楼の真似をしたその様式の目的は労働者の鼓舞であり、当時としても時代遅れだったのだ。同じような考えを当時は自分もしていたため、北京にも似た建物はいくつかある。流れ行く、と書いて流行とはよく言ったものだ。あっという間に美しさの基準は変わってしまう。
 とは言え、社会主義を懐かしむ風潮を差し引いても、20階以上あるそのアパートは、現在でも超高級と言って差支えはなかった。実際、やたら名前が長くて発音しにくい有名人たちも住んでいたらしいが、自分は誰一人知らないし覚える気もなかった。
 当時の高級官僚が家族で住んでいた物なので、一人住まいとしては十分ではあったが、本人いわくしょっちゅうベラルーシに色々なところを壊されるので、部屋の不足により、その度に同じアパートの中で引っ越していた。頼んでもなかなか来ることのない修理より手っ取り早いからだ。だからこそ、近所づきあいも発生しづらく、まったくロシアは気づいていないが、寂しさを感じるのはそのあたりに原因があるかもしれないと、廊下を渡りながら眼下に市内を流れる川に目をやった。
 古の詩人たちは川の流れを移りゆく国家の隆盛に喩えたが、それは今も同じか。
 
 ドアノブが壊れていたので、そのまま家に入った。当然、隙間風が入り、家の中の割には寒かった。
「ロシアー、日本から差し入れあるよー」
 寝室に行けば、ベッドがこんもりと何層にも膨れ上がっていた。お前は亀か。まあ、ずんぐりむっくりなところは似てなくもないが、指摘したら多分コルコルされるに決まってる。べほりべほり叩いて、ロシアーとまた声をかけたら、ようやく毛布の下から、頭が出てきた。やっぱり亀だ。
 
「あ、中国君だ」
 いつにも増してたるたる鼻にかかった声に、ふぅと溜息をついた。まったくどいつもこいつも若いのに元気のない奴らばかりだ。
 
「何か食ったあるか」
「薄めた苛性ソーダでうがいして、紅茶を飲んだよ。あとからし粉のお風呂で足を温めて一番厚い靴下を履いた」
「それだけあるか。もっとちゃんとしたもん食わないとだめよろし」
「だってそれ以上できないよ。気力が湧かない」
 
 言い終わって、ロシアはくしゃみをした。日本にお土産に持って行ってやれと渡されたティッシュ箱を開けて脇に置いてやる。チリ紙と言うのも失礼なほど無駄に肌ざわりの良いティッシュなので、こっそり一箱は自分用に荷物の中にしまいこんである。
 自分ならともかくこの図体ばかりがでかい奴が食べないでどうすると言いたい。会議でいっつも食べているのはあの無芸大食の眼鏡だが、こうした寒さに対応するためにもこの国は体に蓄えが必要なのをしょっちゅう忘れてアルコールばかりで補給しているのだ。だからすぐ気の流れが乱れる。風邪を引かない方がおかしい。
 
 そこからの行動は早かった。元々、準備はしていた。背負っていた籠から、鍋とお玉と材料を取り出して、あっという間に料理が出来上がる。わざわざ台所を借りると言わなくても、することは予想が付くだろう。
 小麦が主食のロシアに合わせて、主菜は粥代わりの水餃子だ。これなら似たのをリトアニアや中央アジアたちが作っていたはずだ。薄寒い部屋では、茹でられた皮が生き物のように湯気を立てた。我ながら力作だ。この弾力に落ちない国はない。
 副菜はシンプルに卵とトマトを炒めた。ほとんど油は使っていない。ボルシチに使うくらいだからトマトは嫌いじゃないはずだ。
 
 レンゲに乗せたら、やっぱり首だけ出して、動けないから食べさせてと言われた。
 ベッドの隣にある窓には、うっすら結露がついていて、三歳児のような落書きがあった。動けないというのは多分嘘だろう。料理を作っている間、遊んでいたな、このでっかいガキめ。
 
「今日だけあるよ、冷ますのは自分でしろよろし」
 
 喜んでこういうのを食べてくれる相手というのも久々なので、少しばかり目をつぶってやろう。洪水前の川ではないんだ。まだ、少しばかり凍ってて、雪解けを待つばかりの川だ。
 
 落書きの終わりから、つうと雫が窓の淵へ、他の粒を集めて落ちて行った。
 
 
 
 
  
  
 

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