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Pannotia

ヘタリア好きが懲りずに作ったブログ。元Pangea。今回も超大陸から名前をいただきました。 CPは独普・米英米・独伊独・西ロマ・典芬・海拉・英日などなど。NLは何でも。にょたも大好き。史実ネタ時事ネタねつ造たくさん。一部R18あります。 その他作品として、デュラララ!!(NL中心)とサマウォあり。

   

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あれは、九月ではなかったが (英と米)


 2008年の9月11日に書きました。
実際の事件が絡んでいますので、注意して下さい。生き死にも絡んでます。

 あの事件は、その日になくなった人間とその遺族だけなく、その後の戦地、別の国、はたまた救助にあたったボランティアに粉塵による肺の障害が出たところなどまでも含めた上での事件だと思います。






 
 普段のニュースは、BBCをメインに選んでいるが、チャンネルを回せば簡単に大西洋を超えたの放送局にできるものだ。
 いつも見る正統派英語を規則正しく並べる壮年の男性キャスターと違って、あちらのアンカーウーマンはブロンドの美人だったが、語調が強く、実際目の当たりにしたら、俺の好みではない分類に属するだろう。いい尻をしてそうなだけに残念なことだが。
 
 庭のオールドローズが見ごろなので、後でいくばくか摘もうかとぼんやりしながらも、目に飛び込む追悼式典に七月の事件を思い出す。あの日も、憔悴して帰ってきた俺を尻目に数々の王族の名を持つ彼女たちは咲き誇っていた。
 むしり取りたくなるほどに。赤やピンクや白の花びらをぐしゃぐしゃに散らしてしまいたくなったほどに。
 
 俺にとっても、本土への直接攻撃はそれこそ第二次世界大戦までさかのぼるものだから、今でもその原因や理由を含めた詳細が明らかにならないのは、すっきりしないものだ。
 同じような単語を並べた事件でも、世界での認知度は段違いだ。確かに被害者の人数も、爆発の規模も違うものではあるが、悲劇に数や規模の違いはない。
 
 あの時、俺はスコットランドで行われていたサミットで上司に同行していて、当然他の7ヶ国ともそこそこの嫌味とそこそこの賛辞の応酬をしていた最中で、まさかオリンピックの開催を喜んでいた平和な首都で惨事が起こるなんて予想していなかったのだ。前日に至っては、長年苦楽を共にしている麗人たる上司のサポートをしつつ、大本命の候補地であったパリの落選に気落ちしたフランスの皮肉を袖にしながら、夕餉を共にしていたと言うのに。
 上等ながら重い余韻があるウィスキーの香りに包まれて目覚めるかと思いきや、割れるほど痛い頭にトイレへ直行した。スコットランドのドケチ野郎め!安物を飲ませやがったな!と怒鳴りつけようと口を押さえながら電話を取ったところ、部下が飛び込んできて事件を伝えられた。
 
 まだ、頭は刃物で抉られるくらい痛かったし、吐き気も納まらなかったが、そのまま帰らずに休むように諭す部下を振り切り、ロンドンへ走った。
 行軍の苦手なイタリアでさえ、徒歩でドイツまで行けるように、俺たちにとって物理的距離は大した問題ではない。トンネルが崩落したって、俺なら死ぬことはないだろう。とにかく、まだ助けられるかもしれない誰かがいる可能性がある地下鉄へ走った。
 空襲のときもそうだった。防空壕代わりとなっていたそこは、度々の爆撃の振動を受けて崩落したり、水没したりでたくさんの市民が犠牲となった。あの頃の身体の不調に比べたら、こんなのは屁でもない。
 逆に、俺だけがこの程度の不調で済んでしまっていることに泣きそうになった。
 
 鉄くずと化した車両で、かつての戦地を思い出し、果たしてここが本当にロンドンだろうか、21世紀の好況に沸くロンドンだろうかと疑い始めた俺の脳を戻したのは、携帯電話の着信音だった。
 
 最初はフランスだった。大丈夫かと心配された。線路が通じているのだから、お前も警戒しろ、と俺は強がった。フランスは、女の前でするようなため息を吐いて、後で良いワインを開けてやると言った。
 
 次は意外にもロシアだった。
 こういうことには慣れているからね、協力は惜しまないよ。
 無礼にならない程度の淡々とした調子は、却って励ましになった。確かに、俺だけの問題じゃない。
 
 中国からかかった。
 オリンピックどうするネ。
 今んとこ、それどころじゃねーが、初めての開催でもないし、どうにかなるだろうよ。それよりお前こそやばいんじゃねーの。
 まあ、対策を考えとくアルと、中国は会話を終えたが、今思えばそのときあいつにしては珍しく、俺の前で「あへん」という語尾を使わなかったのは、せめてもの憐憫だったのかもしれない。それに気づかなかったのは、やっぱり俺は混乱していたのだ。
 
 サミットで会っていた、日本、ドイツ、イタリア、そしてカナダと続き、アメリカからかかって来たのは、既に事件現場の捜索や処理も終了した後のことだった。
 
 独立記念日のパーティーが続いて忙しくてね、との言葉で電話は始まった。
 数年前の九月の事件以降、戦意高揚のため本人は気づいていないが調子の悪い身体で仕事に没頭していることは、俺だけでなく世界中が知っていて、案じてもいた。ここ数年、7月の半分は、ナショナリズム誇示のイベントに出っ放しのはずだ。ほとんどの国は、あいつをでしゃばりのええかっこしいの押しつけ野郎と罵り、俺もそれは然るべき評価だと感じていた。
 だからこそ、俺は愛すべき国民の反対を押し切り、あいつの側に留まろうと思った。近くにいれば何かができるかもしれない。近くにいれば、話を聞いてくれるかもしれない。
 九月の事件の詳細を知るチャンスもあるはずだ。なら、それを生かして防御も可能だろうと。
 しかし、俺には情報を生かすどころか、国民の犠牲という反対を押し切った報いが来ただけだった。
 
 あいつは、悪いが俺は謝らないと言った。
 
 俺は、それでいいと泣いた。事件を知ってから、そこで初めて泣きそうな気持ちがようやく涙に出た。
 謝れないあいつにも、それを責めない俺にも、憤りも切なさもやるせなさもごちゃまぜになった情勢は、その後、あいつと俺や互いの上司や外交に経済を取り巻く事象の混乱を見れば、どういう雰囲気であったか想像がつくだろう。
 
 後からわかったことだが、あの事件の最大の悲劇は、加害者とされた爆発物の所持者たちさえも、騙されてその荷物を背負わされたという点にある。
 あれも、朝の、それこそ優雅な一日を、好みのブレンドにした濃いアッサムで始めるような時間帯で、ほぼ同時に地下鉄の車両が吹っ飛んだのだ。
 少し遅れてダブルデッカーも一台。そこで実行犯とされた青年は、地下鉄の事故を聞いて心配になり、別れた三人の友人の携帯電話に、相手がもう聞くことはないメッセージを入れた。そして、安全だと彼が思い込んだバスに避難し、「預けられた」大切な荷物が無事か調べ、割れないように大事に膝に乗せて、座り――。
 ロンドンから帰る乗車券を持ち、幼い子どもや妊娠中の妻を残した彼らは、恐らく自分たちがそんな運命を辿るなんて思っても見なかったことだろう。
 
 スコットランドヤードでさえも混乱のため、その後、無数の失敗をしでかした事件については、いくつかの組織が犯行を名乗り出ていて、世界中に認識はされていても、肝心の『彼らに爆発物を預けた』者の正体は、未だ不明である。
 
 執事が香ばしいトーストと共に持ってきたロンドンタイムズは、やはりテレビと同じような内容の記事が去年より面積は小さいものの並んでいて、隣にはシティの株価を動かす企業合併が同じくらいの扱いで取り上げられていた。
 花の形にされたバターをすくいながら、斜め読みをしていく。そして紅茶を一口、ドルトン青がきれいなお気に入りのアンティークだ。
 俺は、ようやくそこで一息ついた。
 
 朝食が終わったら、庭に出よう。手袋を敢えてしないで、棘を感じながら花を摘もう。
 オールドローズだけでなく、他のバラも悔しいくらい咲いているので、俺は七月だけでなく、この日にも花を供えることにしている。
 地下鉄へ、バスへ、遺された子どもたちが通う学校へ。
 手向けられた彼らは、その意味も、贈った俺の理由も気づかないだろうけど、そうしないではいられない。
 
 なぜなら、この日は、七月の事件が起こる理由となった日なのだから。
 アメリカが変わってしまい、俺も……いや、もしかしたら俺以外の各国も変わらざるを得なかった日なのだから。
 
 その判断を後悔はしていないけれど、いつかアメリカが、俺が七月にも九月にもロンドンとニューヨークとその他の国や街について思うように、九月以外の月にニューヨーク以外の街のことを、あいつが思い出してくれるようになったらいいと願っている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 fin
 
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