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Pannotia

ヘタリア好きが懲りずに作ったブログ。元Pangea。今回も超大陸から名前をいただきました。 CPは独普・米英米・独伊独・西ロマ・典芬・海拉・英日などなど。NLは何でも。にょたも大好き。史実ネタ時事ネタねつ造たくさん。一部R18あります。 その他作品として、デュラララ!!(NL中心)とサマウォあり。

   

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温泉!温泉!(独普・R15)


・ラブラブイチャイチャな独普
・独普でお風呂

 リクエスト二ついただきましたー!

 お風呂ネタや、和風温泉ネタは結構色々なところでやっているので、思いきって欧州の高名な温泉へ。
 ヨーロッパの温泉と言えば、ここか、ハンガリーさんところのスパ(地名)だったりします。

 ちなみに、本当にすっぽんぽんで○浴です。タイトルは、そこの地名の和訳から。

 ラブイチャ度は、うちにしては高めかもしれませんが、よそ様に比べれば普通な気がします。




 
 国境一つ手前の長い緑のトンネルを抜けると、そこは一面の南国だった。
 南国と言っても、その頃のドイツはヤシの実が生い茂るビーチや、極彩色の動植物が飛び出すジャングルなんて知るわけもなく、ただ濃い緑を通り越して黒々さえしている木々と、その間を抜ける風だけが伝えた雰囲気に過ぎない。しかし、乾いた冷やかな大地ばかりしか知らない少年にとっては、そこは立派な南国だった。
 空さえも、いつもより青く感じられ、鹿皮の背もたれに腰をやっていた兄は、そうれもうすぐだと口笛を吹いた。開けていた窓から、白い手袋の指を前に示す。
「あと、ちょっとしたら、教会の尖塔が見えてくるぜ」
 蹄のリズムは、高らかに刻一刻と目的地に近付くことを伝えてくれた。ギャロップ、ギャロップ。しばし、それは凱旋曲にも聞こえる。この兄に、似合う音楽だ。
 
 お前を自慢しに行くぞ。
 そう言った兄が、南のそれぞれの侯たちの領土にドイツを連れだしたのは、数か月前のことだった。東へ南へ、はたまた西へ。バイエルンの祭りで真っ白なヴルストをかじり、アルプスの鋭い尾根のすそ野を馬で駆けた。
 7週間しか掛からなかった、オーストリアとプロイセンが、「ドイツをどっちが育てるかという命題への真剣なる親権争い」は、最新式の武器を開発していたプロイセンの勝利に終わった。
その凱旋も兼ねていた旅行は、どちらに付くか先行きをうかがっていた南の属国たちへの最後通牒でもあった。断れば、この兄がどういう行動に出るか。大帝国を負かした軍事国家を敵にまわす馬鹿はいるまい。
ほんの7週間で、ドイツの背丈は一気に伸びた。人間の子どもで言えば、10歳前後の姿から、一気に青年らしさが漂い、兄曰くスイスやバルト達とあんま変わんねーな!とのことだった。この旅行で、ドイツは実際、初めてのビールを飲ませてもらったし、ブルストにマスタードをたっぷりつけることを許してもらえた。そういう、初めてを自分が体験することよりも、ドイツがそうしていることを満足そうに破顔している兄を見ることが、ドイツは何よりも喜びとしたものだった。
一方で、兄が最も喜んだのは、貴重な石や、精巧なからくりや、滑らかな陶磁器や、雄大な景色よりも、我先にとドイツの指先や足の甲に口づける国々の姿を見ることであった。
 
 我らが王よ! 若きドイツに栄光あれ!

 隣で地味な軍服のまま、兄は腕組みをしていながら満足げに立っていた。この人が、第三者がいる場所では、ドイツの前で弛緩した姿勢を取ることがなくなったのは、いつからだろうか。それは、万が一、ひれ伏したはずの国や、従者たちが、ドイツに刃を突き付けてもすぐ臨戦態勢を取れるためでもあり、プロイセンよりドイツが高位たる存在であることを知らしめるためでもあった。
 プロイセンは、戦場と同じくらい気を張り詰めていた。
 戦勝に浮かれている時ほど、攻め入るのに容易い時期はないことを、彼はよく理解していたのである。
 しかし、ドイツが兄に休むように言っても、お兄様は平気のへっちゃらだぜプップクプ~と返事をするに決まっている。
 
 そこで、兄想いの王は考えた。
 自分が保養を希望すれば、兄も一緒に休んでくれるに違いない。
「そうだな! お前も疲れているだろうし、とっておきの場所があるぜ!」
 ほいほい兄は乗ってきて、フランスとの国境にほど近い温泉地を最終目的地とした。
 二千年近く前に、かのローマ帝国が愛した温泉は、ギロチンや伝染病から逃げて来たフランスの貴族たちが文化を伝えて、今やヨーロッパ随一の温泉地となっていた。
 
 アルザスの山々にほど近いと思えないほど、洗練された建物や公園が並び、絢爛豪華なカジノは、ドイツのよく知る軍事的機能美に満ちた城を凌駕する賑わしさだった。たくさんとの香水と、シャンパンに、黄金の匂いがかぶさっている。
「元々は離宮って意味だったから、まあある意味、城みたいなもんだな。モンテカルロにも負けねぇ、世界一の不夜城だぜ」
 一応、お忍びという名目なので、ドイツもプロイセンも裕福な商人か下級貴族のボンボン兄弟程度の格好で来ているが、王族もこっそり来ても周りは見て見ぬ振りをするほど懐も深い保養地であるだけに、兄の銀髪も不思議と目立たない。
 支配人や仮面を付けた婦人たちの挨拶もとい誘惑を慇懃に断ったプロイセンは、代わりに真鍮のチップを1枚だけドイツに渡し、勝負してみろよと言った。
 カードやダイスが行き交う中、ドイツはルーレットを選んだ。
 回り始め、赤も緑も黒も溶けていく。ディーラーの手から、吹けば飛ぶほどの小さな白球が飛び出した。回り、回って、運命の輪が溶けあって。
 チップが置かれるのを締め切られる直前に、ドイツは兄の好きな黒にかけた。
 やがて白球は気まぐれに動き出し、隔壁を飛び越しては戻る不規則な音を立てながらやがて着地した。
「黒の13!」
 魔の数字は、きらきらとした刻印が入ったチップを1枚ドイツにもたらした。
 ドイツはその2枚をすぐ現金に交換して、公衆浴場の切符を買った。

 浴場の荷物係に、身につけているものを預けながら、兄さんは遊ばないのかと問うてみれば、兄は前後に長く垂れているワイシャツを、両足の間で止めているボタンを留めながら――当時はワイシャツが下着の代わりだったためである――笑った。
「俺様が勝ったら、お前はギャンブルは天国だと思っちまうだろうし、逆に俺様が負けたら格好悪りぃじゃねーか。だから、お前に任せた」
ビギナーズラックはつまりお前には神様が付いているってこと。でも、それ以上に嬉しいのは、お前は初心者が最も勝ちやすい、確率論で言えば、胴元と客と勝率は理論的には半々のルーレットをお前が選んだことだ。さすが俺のヴェストだぜ。
脱ぐ行為の途中で笑うのは、少しその先に楽しいことがあると期待しているようなタイミングがあるようで、なぜだかドイツは胸がざわめいた。
「楽園を見せてやるよ、ヴェスト」
 
 そして、数分後、ドイツの胸のざわめきは、ざわめきを通り越した動悸となることになる。
 目の前を、全裸の女性が大事なところを隠しもせずに堂々と横切って行く。
「ここが良いのは、武器を持ちこめねぇってことだぜ。さすが、親父と同じ名前の浴場ってだけはあるな」
 
 ああ、直接会ったことはありませんが、天国の大王様。
 貴方様は、防衛的な意味でなく、フランス文化大好きという趣味的な意味で、こういう方式ですよね。絶対そうですよね。

 水着でなく、脱衣で入る温泉はヨーロッパでは珍しい。おまけに、混浴である。
 浴槽に行くまでは、いい歳をしながらも兄に手を引かれて下を向きながら歩いた後に、女性を目にやらないようにするために、ドイツが取った行動は、兄を見ることだった。
 しかし、入浴は定期的にしていたが、全裸の誰かと一緒に入るという経験はドイツにとって初めてである。おまけに、一方のプロイセンは目を細めてうっとりと成長したドイツを見つめている。周りの全裸の貴婦人には目もくれず、最愛の弟だけを彼は警護という名目のもと、存分に見つめている。
 7週間の強烈な成長期の後に、兄の前で素肌をさらすのは、初めてのことだった。ドイツにだって、この兄の表情が、息子の成長を喜ぶ母親に近いものだということは頭ではわかっている。
 わかっているのだが、プロイセンの身体は湯気の中、温められて、少し頬も紅色になっていることとか、水滴がついて、頸筋も唇もほんのり濡れていることとか、あまつさえ、その視線が、ドイツの下半身を歓喜に満ちた瞳をより赤くさせながら凝視していることに、羞恥以上の何かを感じずにはいられなかった。 湯の噴水が白亜の彫刻が並ぶ中、こんこんと湧き、翡翠色のドーム天井から虹色に光が零れる。
 そのすべての光が、湯にも兄の肌にも反射する。
 ここは本当に楽園かもしれない。
「に、兄さん」
「んあ?」
「あんまり、見ないでくれ」
「いやー、ちょっと見ないうちに立派になったよなあ。こないだまで、毛もほとんど生えてなかったのによ」
「感慨深いコメントも勘弁願いたい」
 
 兄から見えない場所に隠すように、温めの湯につかると、プロイセンはゆるゆるとドイツの髪をすき始めた。胸や腹に比べると、少し冷えた指が気持ちよく、ドイツも目を細める。時々、指や首筋にかかる。
 くすぐったくなるような、じんじんかゆくなるような。
 少しでも長く指の感触がかかるから、髪が伸びて良かったと、これほどまでに思ったことはない。
 
 そうして、兄弟は久しぶりに、いい匂いのする石鹸で、つるつるに互いを洗いあって、だらだら浴槽につかっては、サウナやスチームで身体をほぐした。
 最後に、つま先まで赤くなった兄が、人気のないシャワー場にドイツを連れ込んだ。プロイセンは湯を出して、会話が聞かれないように声を潜めた。その振動さえも伝わるくらい、身体も密着している。
「どうだ。最高だろ」
「ああ、素晴らしいところだ」
「最後に、そんなお兄様からプレゼントがある」
 まるで耳を舐められるほどの距離で兄は唇を開いた。
 
「さっきのカジノでも、この浴場でも、気に入った女はいなかったか。何人でも呼んでやるからな」
酒、ギャンブル、と来たら、次は女だろ?
 
 シャワーの音が止んだかに思えた。
 気が付いたら、ケセケセ笑う、楽園の誘惑者を黙らせたくなり、ドイツはその頭を抱え込んで口づけていた。
 たくさん女性を見たが、この兄しかここに来てから目に入っていないという事実を、そこでようやく意識した。そして、それより先に身体が動いていた。
 間もなく自分はこの兄に懸想しているという結論に辿りついたときには、自分の身体は水風呂に投げ飛ばされていた。
 噴水と同じ高さまで、水しぶきが上ったのがわかった。
 
「まったく、初めての公衆浴場だからって上せちまったか~。やっぱりちょっと早かったな! 俺様うっかりしてたぜ!!」
 水風呂の底からは、高らかな笑いは届かない代わりに、こちらの獣じみた視線も辿りつかない。
 兄は、ドイツこそすべてを手に入れた存在だと吹聴するが、まだ肝心なものが手に入っていない。
 いつか絶対、この両腕に抱えてやる。すべてを委ねさせてやる。
 兄の軍事以外での、この危機感のなさは、早くしないと誰かにかっさらわれかねない。可及的速やかに、自分は強大になる必要がある。
 タイルにぶつけた痛みの中で、ドイツは堅く決意をしていた。
 
 
 水しぶきを立てながら、プロイセンは冷てぇと喘いだ。ばたばた暴れる腰も押さえつける。
「なあ、兄さん。覚えているか。あのとき、俺はここで貴方に欲情してたんだ」
 あのときと同じ噴水は、形を変えずに弛まず温泉を噴き出している。高い天井も、裸体の彫刻たちも変わらない。
 兄の姿は、少し痩せた。しかし、目の色や肌の白さは変わらない。いつもより、うっすら肌が赤くなっているのもあの時と一緒だ。ただし、その理由は湯の温かさだけではない。
「こんな明るいところなんて嫌だ!」
「どうしてだ? 誰も見ていない」
 
 いつもなら、あの頃と同じく全裸の男女が闊歩する浴場も、今夜は二人だけ。貴重な観光資源ではあるが、この目的のために今夜は貸し切った。互いの声の反響音以外、何も聞こえない。
 文明の利器は何一つ湯気のために持ち込めないし、服装だって脱いでしまえば昔と変わらない。兄が、自分を意識していなかった頃と限りなく近い再現に、その目は戸惑い、揺れて濡れて床ばかりを見る。
 それでも、時々こちらを見る。ちらりと見る。
 あの頃の成長を愛でる視線ととてもよく似ていて、だが今は、こちらにとってはそれは照れや羞恥ではなく、被虐したいきっかけにつながる。
 いささか乱暴に唇を交わして涙の混ざった舌を味わって、結んだ唾液の糸の上にも、湯の霧が降る。プロイセンは、ため息を悩ましげに吐いた。
「お兄様、お前の国家権力の無駄遣いぷりに泣きそう!」
「ああ。いい声で鳴いてくれ」
 
 兄の頭を撫でながら、水から引き揚げてやり、最も大きな浴槽に手を引く。観念した兄は、なすがままにドイツに導かれて、足を湯に浸した。自棄になったのか、それはほとんど叩きつけるに近く、兄の足底は水面に音を立てて水をはねさせた。
 プロイセンの爪が虹色に光る。ドイツは、その間をかき混ぜて乱反射させた。
 


 
 
Fin
 
 
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