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Pannotia

ヘタリア好きが懲りずに作ったブログ。元Pangea。今回も超大陸から名前をいただきました。 CPは独普・米英米・独伊独・西ロマ・典芬・海拉・英日などなど。NLは何でも。にょたも大好き。史実ネタ時事ネタねつ造たくさん。一部R18あります。 その他作品として、デュラララ!!(NL中心)とサマウォあり。

   

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呑みこむ黒星 (独普+枢軸たくさん)


 リクエストより、ほのぼのちょっと史実交じりで、そこはかとなくドイプ。枢軸+ぷ+ロマ+貴族+姐登場希望、とのことでした。

 ありがとうございます。

 そこはかとなく、と、ほのぼの、の加減がこれでいいのかドキドキですが。

 そして、史実って言ってもこのメンバーを登場させるために、基本的には現代になってしまったのですが……。


 
 今夜のベルリンはイタリア国歌に征服された。
 開催国の名のもとに、下準備の方ばかりに気を取られていたドイツではあったが、彼自身の期待より、代表は良くやってくれた。三位という結果には確かに悔しさがあるものの、満足感も残る結果である。貯蓄とパン作りが趣味の監督は想定しうるなかで最高の状態にチームを発酵させてくれたし、礼節のある若い得点王の活躍も言うまでもない。
 何より、今大会は控えとしてチームに貢献し続けたドイツの知る内でも最も偉大なゴールキーパーは昨日の三位決定戦では主将となり好セーブを連発し有終の美を飾ったことには、感銘を受けるしかなかった。流石のドイツも、やや目がしらが熱くなっていかんいかんと周りを見たら、いいおっさんの同僚や部下は全員、拳を額に押さえつけておいおい嗚咽していた。唯一、去年ドイツの上司になったばかりの女性だけが、苦笑いしてドイツにウィンクをしたものだ。
 
 決勝戦とトロフィー授与式を、主催国として見送ったドイツが、SPにIDカードを見せながら、優勝チームの宿泊ホテルのホールに辿りつくと、そこにはセリエやプレミアムやエスパニョーラで数十億円を稼ぐプレーヤーや、その何倍もの額を手にしているスポンサーたちの中で、奇妙に目立つ和服の青年が、器用にフォークで白トリュフのパスタを巻きつけていた。
「むぐ、こほっ。ほいふはん……!」
「飲みこんでから話して良いぞ」
 美味いもののあるところに日本あり。

 口元を懐紙で抑えて、お見苦しいところをお見せしました、イタリア君に誘われて決勝戦まで見てたんですよ、と前置いて先ほどの試合について幾ばくかドイツと話した。ここ十年と少しで大会参加し始めた日本は、まだまだ決勝リーグの経験が浅く、こうして見たり、ドイツやイタリアから選手の特徴や戦術について知ることも勉強になるらしい。
「この歳になって、新しい競技に熱中できるとは……。歳も取って見るものですね」
「前回のお前の運営は、俺も参考になった。礼を言う」
「いえ、慣れないことをしまして、あの折はご迷惑をおかけしました」
 そう言った後、どれほど仲が良くても対人間隔において距離を取ることが多い日本にしては、一歩近づいてきた。まわりにあてられて、くるんが生えかけているのかもしれない。
「プロイセンさんは」
「こういう行事は、俺だけということになっている。ここ一週間ほど、自宅には帰れていないものでな。イタリアに挨拶したら帰るつもりだ」
「そうですか。早く帰って、キスの一発でもしてあげて下さいね。この仕事バカのすっとこどっこい。あの方、ああ見えてさびしがり屋だから」
 うむ、相当イタリア入っている。くるんが生えるのも時間の問題だろう。
「イタリア君たちなら、あちらですよ」
日本が手のひらで指した先に、見なれたくるんの二人組が、ジェラートの山に舌を動かしていた。礼を言って、その場を辞す。
 
「優勝おめでとう、イタリア」
「ありがとドイツー! パスタ食べてく? ピッツァもあるよ!」
「いや、遠慮しておく。家で兄さんが待っているんだ。」
「そっか」
「そうだそうだ! 負け犬はこれでもくらって、とっとと帰れ!!」
 腹にずっしり投げつけられた加速物をとっさにゴール前のサッカーボールのごとくキャッチすると、一抱えもある瓶だった。中には微かに泡が揺れる。
「シャンパンか?」
「スプマンテと呼べジャガイモ野郎! 俺たちには勝利の美酒だが、負け犬はちびちびみすぼらしく飲みやがれコノヤロー!!」
「兄ちゃん……」
 長い付き合いだ。これは遠回しの、早く家に帰って兄と酒でも飲め、というロマーノなりのねぎらいということは、ドイツにはわかった。液体の重みを抱えながら、シャンデリアと国歌に満ちた会場を後にした。
 
 地下鉄・Sバーンの一号線プラットホームにて、自宅の最寄り駅への路線と直通であることを確認した。
湖にほど近い町に移り住んで、もう15年ほどになる。しょっちゅうサンスーシ宮殿へ墓参りに行く兄のため、ということを口実に、統一後のドイツはポツダムと仕事場の中間地点に住居を構えた。電車でも車でも通勤には30分ほどにある、古くからの風光明美な住宅街である。海のないドイツにとっては貴重な湖のほとりで、週末にはベルリン都市圏から余暇を楽しむ市民も多く来訪するものだ。
とは言え、政府中枢にいる身ならば、市街地中心部に住居を構えていた方が、こうして忙しい時でも、帰れることは帰れる。それでもドイツは、時間節約は美徳だと感じつつも、通勤時間を縮めるつもりは起きなかった。しょっちゅう帰らない弟に、兄は何も言わない。そのことは、引っ越してすぐにご近所にできた、過去を突き付ける記念館と無関係でないことぐらいは、あの兄ならわかっているだろう。
 
 百年近く前から政府官僚が住んでいた邸宅街の別荘は、恐ろしい決定をしたにしては、ひどく優美で繊細な建築様式のまま、今日も佇んでいる。ドイツは時間が許す限り、その記念館の前を通って自宅に戻る。今宵も、市街の喧騒とはうらはらに、窓格子も白い十字になって、夜の中浮かんでいることだろう。
 
 靴が木の床を削っていた。人を踏みつけるかのように削っていた。勲章がぶつかり合って鳴った。銃身の見えない火花が灯るかのように鳴った。家族との夕食と同じような笑顔の中、書面のサインが行き交った。
 わざとらしい咳払いの音が止まらない。楽しそうでもある咳払い。そんなに何が楽しいのだ。
 軍人はむしろ少数派だった。博士、教授、社長、会長と呼び合う間では、定義付けから始まり、運搬をどうするか、コスト面は、技術面は、とまるでそれこそ先日、今回の大会のプレゼンをし合う各界の権威が集った時と重なるほど、現代でも各企業や省庁で毎日行っているような会議だった。違いは、そこで扱っている対象が人間であるというだけ。
 プロパガンダとマーケティング程度の差しかなかっただろう。
 
 その場にいたと言うわけではない。自ら同意したわけでもない。
 ただ、あのひどく寒い一月の夜から、喉が痛くなった。
 破竹の勢いで進んでいた時代の中の、ちぐはぐな痛み。部下や同僚たちに激昂する日々だったから、声が掠れたんだろうと思い込むようにしたが、次第にその理由を知り、だけど、何も止められなかった。
 
「お前、今どこが痛いかい」
 ドイツに胸倉を掴まれながら、フランスが笑った。自慢の顔も半分以上、血と泥が混ざっていたのにも関わらず。
 その頃には、ビールでさえも喉を通らないほど、焼けついていた。答える気はなかったが、外交に強い国は、言葉を続けた。
「俺のときは、頸だったよ。広場で晒しものにされる元貴族たちを見物する気はさらさらなかったけれど、毎夜眠れないほど痛んだんだ」
 黙れ。
「スペインも宗教裁判時代、腹の中身が出るんじゃないかってほど吐いていたよ」
 黙れ。
「反政府主義者だろうと、異端者だろうと、本来俺たちが愛すべき、守るべき国民を殺してるにしては、軽い罰だったと思うけど」
 黙れと言っている。
 そのまま、パリに当たる場所をダガーで抉った。

 瓶の中の水面が揺らいだ。とっくに最寄駅近くまで、来ていた。
 あやうく乗り過ごすところであったが、そうならなかったことに感謝をしつつ、中世ゴシック体で書かれた駅名の下から外へ出た。
 犬三匹と同じ勢いを、またもやドイツはサッカーボールのごとくキャッチする羽目になった。片手にボトルを持ったままだから、ロマーノにそれを投げつけられたときより苦労した。
「ヴェストぉおおお!!」
「何だ兄さん。泣いてたのか」
「だって、オリバー引退だったんだぜ! これで泣かないのはゲルマン男じゃねーよ!!」
「おかえりなさい、ドイツ。と言っても、私たちはお暇するところですが」
 
 夏物のコートを燕尾服のように羽織った青年と、その後ろに飾り花の隣の頬に、赤・白・緑のボディペイントの跡が残っている女性が会釈した。二人ともドイツにとっては親戚に当たる。
「来てたのか」
「夏場は大したコンサートもありませんからね」
「昨日の三位決定戦が終わってから、ずっとこうなの。まったく、いい迷惑よね」
 イタリアびいきの三人のことだから、決勝戦を自宅で鑑賞していた、というわけか。ドイツは合点した。もちろん、本人が選んでいるとはいえ、置いてけぼりとなってしまった兄への気遣いもあるだろう。
「しかし、よくこの時間に着くとわかっていたな」
「それはひとえに、この素晴らしいお兄様の……」
「日本さんから多分この列車だろうと連絡をもらったの。で、ついでにこいつに送ってもらったってわけ」
 自国の国旗がそのまま、イタリアの三色でもある頬を動かして、彼女は答えた。直接見たことはないが、昔のやんちゃな時代は、こんな感じだったのでは、と思わせる笑みだった。こういう活動的な祭りは、彼女も兄も大好きなのだ。きっと、観賞会は大盛り上がりだったことだろう。
「それに、私たちもイタリアちゃんたちにおめでとうが言いたいのよ。今から行けば間に合いそうだから」
「今夜は、彼らのリクエストに応えて好きな曲を演奏しましょうかね」
「あらあら、大盤振る舞いですこと」
「お祭りですから。ああ、列車が来てしまいますね」
「あっ、オーストリアさん。そっちは逆のプラットホームです!」
 マイペースにその場を去る青年を追いかけつつ、じゃあ、とこちらに挨拶をして彼女も手を振った。
 
「お前の『教皇さん』は、相変わらず乗り心地いいよなー」
 五年前に買ったドイツの車を、兄はこう呼ぶ。去年、就任した教皇はバイエルン出身で、枢機卿時代はこの車種を愛用していたためだ。元修道院らしい感性は、ドイツの融通の利かなさと好きなサッカーチームにおいて共通点があると指摘してくる。
 もう新型は出ていて、燃費はそちらの方が良かったが、買いかえるのはまだ早すぎるだろう。
 兄は兄で車を持っているのだが、これが旧東側の良く言えばノスタルジックな車であるために、客人を乗せた運転には甚だ不向きなのだ。排ガスもかなり出るので、そのうち規制もされてしまうだろう。そろそろ、新しいのを買ってあげたいところだが、愛着はあるようなので、悩ましい話だ。
 
 やさしいお兄様が、家まで連れてってやったぜと、運転席から軽くキスをされて、唇を離された途端に唐突に質問が飛んだ。
「どうだったか」
「三位だ」
「それは俺だって昨日、生中継見てて知ってるぜ。ポルトガル、結構強かったなぁ」
「でも、準決勝でイタリアに負けた後だから」
「ああ、負けちまったな」
 ドアを閉めて、鍵をかけて、ガレージから玄関まで歩くうちに、どちらからともなく、くつくつ笑い始めた。

 負けたなぁ、ああ、負けた。
 お前悔しくないのか。
 兄さんこそ。
 そりゃ、悔しいけどよ。何かいいよな。誰も死なねーし。
 ああ。
 やべぇ、今すぐお前と祝いてぇ。早くそれ開けろよ。
 
 可及的速やかに台所に駆け込み、ボトルのコルクを抜いて、揃いのシャンパングラスになみなみに注ぐ。アドリアの海にも似た、若草色を淡く溶かした液体が揺れていた。
 すぐに兄は掠めていき、鼻先を近づける。
「前、ここで大会やったときは、俺たち別チームだったよな」
「それにこんな風に、ハンガリーや日本とも話せなかった」
「……じゃあ、そういうもろもろに乾杯だぜ!」
「ああ」

 これをあおっても、もう喉は痛まない。だから、こうして近い場所で、決して忘れないように目に置くようにする。泣きそうになってしまったら、兄を見る。
「ちょっとしょっぺえ」
 泣く代わりに、その味を感じたかったから、兄の唇を舐めた。決して、勝利の味ではなく苦みさえもあるけれど、確かめずにはいられなかった。
 
 
 
 
 
 fin
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