むかしむかし、イタリアにしてはとっても寒い寒波のクリスマスイブのこと。一人のほっかむりをしたロマーノが、貧相な服を着て、道端に籠を抱えて立っておりました。
「とまとー、トマトいらねーか、こんちくしょー」
ロマーノは、おじいさんが亡くなって以降、とっても貧乏になってしまっているため、クリスマスイブもそうやって過ごさなくてはならないのでした。
とってもさむくて、とってもお腹のすいていたロマーノですが、商売ベタのため、トマトは一つも売れません
「はぁはぁ、お兄さんが買ってあげるよ、ハァハァ!」
胡散臭い髭がやってきましたが、危機感を感じてロマーノは逃げました。全裸だったので。
「はぁはぁ、フェリちゃんによく似てるぜ。ヴルスト食わねーかブルスト!!」
やっぱり危機感を感じてロマーノは逃げました。じゃがいもだったので。
仕方がないので、ロマーノは売り物のトマトをちっちゃな手で抱えて、かぷりと口に含みました。甘酸っぱい味が広がります。
するとどうでしょう! 目の前に、トマトのパスタに、トマトのピザが現れたのです!
お腹のすいていたロマーノはそれに飛びつこうとしましたが、口に含んだトマトを飲みこんだ途端、料理も消えてしまいました。
仕方がないので、ロマーノは二個目のトマトをかじりました。するとどうでしょう! あかあかと燃えるトマト型のストーブが現れたのです。
ロマーノは思わず、まっかなストーブに手をかざしましたが、トマトを飲みこむとやはり消えてしまいました。
ロマーノはそこで売れ残りのトマト全てを口に含みました。
「あかーん!! そんなことしたら、かわいいロマの顔が台無しやわー!!」
トマトの親分が現れました。親分はロマーノを抱っこしました。
そうして、少女はほくほく顔の親分にお持ち帰りされてしまいました。
その後、ロマーノを広場で見る者は誰もいなかったとのお話です。
めでたし、めでたし?
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