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Pannotia

ヘタリア好きが懲りずに作ったブログ。元Pangea。今回も超大陸から名前をいただきました。 CPは独普・米英米・独伊独・西ロマ・典芬・海拉・英日などなど。NLは何でも。にょたも大好き。史実ネタ時事ネタねつ造たくさん。一部R18あります。 その他作品として、デュラララ!!(NL中心)とサマウォあり。

   

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しゃる・うぃ・Dance?(英日)


 『帝国様と私』にしようかと迷ったんですが。

 日本では、「Shall we ダンス?」が有名ですが、あの映画のタイトルは「王様と私」というタイを舞台にしたフィクションからだったりします。

 どちらの映画も名作です。


 いつか行ってみたいブラックプール。



 
日本は先日、女学生の足を踏んでしまった。
この学園独自の国家として必要不可欠な素養である「国家学」の実技で行われた、社交ダンスの練習中だった。
日本の懇切丁寧な謝罪は、主にピンク色の平らな生地が、甘い豆を巻いたそれはそれは可愛らしい菓子の詰め合わせで、ラッキーと女学生には喜ばれたらしい。
 
が、俺は思う。
『何で、そこで俺の足をふんでくれなかったんだ』と。
記念すべき、思慮深い日本が自分が誰かを傷つけてしまったという羞恥心を、初めて抱くのが俺じゃないんだと。

  しかし、生徒会長である俺と日本の接触はそれほど多くはない。
  ヨーロッパとアジアとクラスは分かれているし、学年だって違う。面白いことに、この学園の学年は、年齢順ではない。国際社会での地位と比例している。早くから外交手腕を発揮している俺は最高学年であるのは当然だ。逆に、日本は最近通い始めたばかりなので、実力はあれど、まだまだ新入生の扱いになる。
世の中は弱肉強食。血は力なり。智よりも俺はそう考える方が好きだ。
 
なので、紳士として日本の初めてを女性に譲ったことには目をつぶってあげよう。何しろ、こんな権限が与えられたのだから。

  背を正して、眉を伏せた日本が、ちらりと顔を上げた。さらさらの前髪が微かに動く。
触りたい。
嗅ぎたい。だって、いつも石鹸の香りがするもんな。水の匂いもだ。海も風呂も俺は大好きだ。日本が大好きだ。
 
生徒会長として、ダンスの指導をするようにと仰せつかったことを幸運と言わずして何と言おうか。
「まずは、俺のやり方を知ってもらおう。手を取れ」
「はい」
小さく発声して、おずおずと手首を近づける。乗せられた瞬間。耳まで赤くなるかと思った。

 特別柔らかいわけじゃない。小さいわけでもない。
声が震えるかもと錯覚するくらい吸いついた。すべすべする。何だこの質感。シルクか、それとも真珠なのか。これぞまさに、東洋の神秘なり。
 
「そっ、それじゃあ。俺の動きに合わせて貰おう。その後で、改めてリードするように」
「はい」

 何だこの高揚感。指導欲が湧いてくる。
 俺は基本的に教えるのが好きだ。知識的に優位に立った状態だからこそ成立するし、何より自分が与えた情報で相手が変容するのが楽しい。マイ・フェア・グローリー。太陽の国を、表舞台に出して、麗人に仕立てる。俺のことは、サーか先生とでも呼べばいい。

 と、心の中で思いつつ、ワルツのテンポを刻むメトロノームを弾かせて、教えたばかりのステップをゆっくりと、ゆっくりと。

 腰が入る。接触が広い方が安定して、リードしやすい・されやすいから、これは決していやらしい意味じゃないんだからな!
 日本の顔は見えない。俺の肩元に寄せている。
 
 放課後の学校からは、どこからか金管楽器の音が反響して、運動部の掛け声も窓にぶつかってくる。
 それでも、ホールは二人きりだった。
 小劇場みたいだ。時よとまれ、貴方は美しい。そう言ったのは千年前の劇作家だったか。はるかかなたの記憶なら、スポットライトは瞼の裏に思い出すだけに留められる。

「そうそう。3つずつ数えるんだ。Slow Slow, quick quick」
「すろー、すろー、くいっくくいっく」
「悪くない。少しテンポを上げるぞ」

 思うだけなら罪にはならない。俺は、もろもろを表には出さないように努めながら、逆立ちしてもこなせるぐらいに慣れたダンスを続ける。

「分100。早いと感じるかも知れないが、人間の心音がやや早めの状態くらいだ。慣れればしっくり来る」
「なるほど、欧米の方々は合理的ですね」
「足を止めるな。Slow,Slow」
「くいっくくいっく」

 それでも、俺の心拍は100を超えてるだろうに。日本の心音はどうだろう。俺と同じくらい多くなっているといいな。普段は運動不足だからとか、そんな理由でも構わない。どきどきしていれば、吊り橋効果でも何でも使ってやる。

「イギリスさんはお得意なんですね」
「まあな。ロイヤルファミリーを相手することも多いし、大会もある」
「大会?」
「ダンスの大会だ。北西の海がきれいな小さな町で毎年開かれる世界大会がある。その日は、町中がお祭り騒ぎで、華やかなドレスとタキシードのペアの動きや芸術性に圧倒されるばかりで……」

 ええとそれからと、説明をしようと思ったが、日本の耳に汗が見えた。

「イギリスさん?」
「茶の時間だ。支度してくる」

 腕時計を見た。いつの間にか、かなり時間が過ぎていた。俺としたことが何だ。ダンスは意外と運動量がある。日本に見とれてうっかり無理させていた。休憩が必要だ。俺の頭を冷やすためにも。
 このままじゃ、心の外まで紳士じゃなくなってしまう。

 談話室に茶葉と湯を取りに戻りながら、自分の手を握っては開く。

 ああ、多分、本当に時が止まってしまったのだ、とあの滑らかな肌触りとその時間を、空気の中に解放するかのように。

 いつか、こんな強制ではなくて、「Shall」から始めるダンスの誘いに、同意をもらえたら、と。
 
 


 
fin
 
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