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Pannotia

ヘタリア好きが懲りずに作ったブログ。元Pangea。今回も超大陸から名前をいただきました。 CPは独普・米英米・独伊独・西ロマ・典芬・海拉・英日などなど。NLは何でも。にょたも大好き。史実ネタ時事ネタねつ造たくさん。一部R18あります。 その他作品として、デュラララ!!(NL中心)とサマウォあり。

   

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2Dixies (米+ロマ)


 史実ネタです。おまけに、もう一人のアメリカ君をねつ造しています。

 ちょっとだけ、歴史上の人物出てきます。

 
 
 
 これは誰も知らない俺だけの秘密。
 たまに映画なんかでは取り上げられるけれど、直接他の国があいつに会ったことがないから俺だけの秘密だ。
 
 映画を見るときはピザに限るとばかりにデリバリーを注文してから、あんまりにも時間がかかっているから、思い出してしまっただけだ。
 まったく、やってきたら裁判を起こしてやる。
 
 画面は今でもやたら人気のあるもじゃもじゃひげの元上司の演説から始まって、戦争が始まって、中盤の演説シーンのクライマックスにきてたところだ。
 多分、演説の単語としては世界中で一番有名じゃないかな。何たって簡単なフレーズだ。今も昔も簡単な単語を演説に使うことで印象づかせることは変わらない。そういえば、年齢も同じくらいなところも似てるかも。
 願わくば、最期が同じ形にならないといいとは思ってるけどさ。実のところ、人気があるから殺されるのか、殺されたから人気が残るのかはよくわからない。
 
 あの子は、向こう側にいるのが悔しいぐらい有能な将軍の隣で、テキサスをかけて微笑んでいた。
 そう。最初にテキサスを持っていたのはあの子だった。
 生まれて数ヶ月のはずなのに、その時点で百年以上生きていた俺とまたく同じ外見だったのは勘弁して欲しい。カナダより似てるんだ。仮に他国が会っても、俺としか思わなかっただろう。
「やあアメリカ」
「君もアメリカだろう」
「そうだ。おれはアメリカ連合国。じゆうの国さ、よろしく!おや、意外と身が軽いや」
 
 いや、まったく同じではなかったな。
 最初見たときは、俺より体格が良かった。ぶち当たって、拳を構えたときはこの俺が力負けした。この俺が! 後にも先にもそんな風に直にぶつかって跳ね飛ばされたのは、その時だけだ。
 それからずっと後の南国のやたら田んぼがたくさんあった戦争でだって、事実上撤退はしているけれど、それも数え切れないハチにさされたようなもので、どちらかと言えば奇襲が中心だ。がっぷり四つ組で構えたわけじゃない。
 体格とパワーとは裏腹に、ちょっとだけあの子は俺より幼かった。そこが俺があの子と呼ぶ理由だ。
「馬鹿言うな。人権を尊重しないで何が自由だ」
 
 だけど、段々彼は痩せていった。俺も体調不良だったけれど、あっちの方が消耗が激しかった。
 骨と皮になって、ふらふらになっていたところに俺は引き金に力をこめた。命中率だけは俺の方が上だった。
 
 俺が直接消滅させた国は後にも先にもあの子だけだ。
 血だらけのテキサスを取るため近づいた。額を拭って、瞼を閉じてやった。俺が父としてあの子にしてやったのは、それだけだった。
 まわりはたくさんの旗が立てられていた。
 
 画面の向こうにあの子が見える。
 当時の敵側の軍服姿で笑っている。隣にいた彼の上司は、俺も尊敬できる素晴らしい軍人だった。先進的な考えだったが故郷のために戦った英雄だ。戦争後、当時入り浸っていた学校で会って世間話をしたが、老兵はあの子といた日々を後悔はしていなかった。
 俺が今消えても、多分そんな風に語る人はいないと思う。
 写真を上げようかと言われたが断った。しかし断っても記憶の像が俺を呼ぶ。
 
「どうしておまえがアメリカなのさ。きみは本当に自由なの? 俺とどう違うのかい」
 
 俺にすべての罪を押し付けて殺して自分が正義になったつもりかい。
 
 君は俺と何も代わりはしないよ。奴隷を労働者にしただけじゃないか。見てごらん。所得階層を、教育機会を、刑務所を、ホームレス収容施設を、ほら、ほら、ほら!!! あはははははは君は100年前と何一つ変わってない。旧大陸やアジアよりずっと保守的なのを棚に上げて何が自由の国だ!!!あはははははははははは!!!!だから君が一番仲が良かったカソリックの上司は、俺から奪ったそのテキサスに血染みをつけて死んだのさ!!!!
 
 こうして思い出すあの子は、なぜか俺と同じように成長して、俺と同じように学をつけている。
 次々映し出されるグラフ、表、写真、ファイル、データデータデータ、やめてくれ頭がパンクしそうだ。
 
「……んなに腹減らしてたんか合州国。マグナムなんて美味くねーだろコノヤロー」
 ピザの匂いに意識を取り戻した。目の前には、小柄な男がいた。
 あまり知らないが、俺の呼び方から国家の一人ということはわかった。ピザと言えばイタリアだが、イタリアはこういう顔ではなかったはずだ。そもそも、イタリアは俺を合州国なんて呼んだりしない。
 銃には慣れているのか、ピザ配達国は銃砲を引き抜いて安全装置をかけて、投げて返してきた。
 
「合衆国なんだけど」
「州ごとにあんだけ宗教観が違えば、お前ごとき単なる州の寄せ集めだ。ほい、伝票」
 
 ぜろがいっぱいならんでいます。
 
「げっ、ピザ二枚の割に暴利だなぁ。普通ならせいぜい20ドルだろ」
「俺のマルゲリータ嬢とマリナーラ姫にケチつけるたぁいい度胸だ。いいぜ。よこさないならよこさないで。世界の超大国が自殺未遂起こしたなんて聞いたら大変なことになるな~、ま、俺んとこはそういう混乱時に動く奴らがいるからあんまり影響ないけどな」
 
 配達国は、灰皿に残っていた吸いかけのタバコを持ち、落ちていたライターですい始めた。客のがそのままだったのを後悔した。そう言えば、童顔で身体も貧相なのに偉そうなところが少し似ている。あ、でも顔立ちはこちらのが女受けがいいかもしれない。雑誌のモデルや俳優と言っても通りそうだ。
 煙をぷぅと俺の顔面に吹いてきた。夜の商売のおしろいと同じくらい苦くて扱いどころに困る匂いだった。
 前言撤回。絶対、こういう奴がモテるのを許してやるもんか。
 
「天候不良で作物がどうにもならなくて来ては見たが、いやいや、来てみるもんだ。弟みたくあくせく車やら何やら油にまみれて作るのがバカバカしくならぁ」
 弟と言う言葉を聞いて、会議で何度かイタリアが咳をしているときに、兄ちゃんが働かなくって、という話をしていたのを思い出す。ああ、これが例の。
 確かに不良という他ない。イタリアの話ではイギリスと同じくらいの年齢らしいので、ロクな奴じゃないというのは予想が付いた。実際、ロクでもない。イタリアの兄なら、自分より年上のはずだ。とてもそうは見えないけれど。そう思わせる笑みを相手は洩らす。くつくつ前髪が揺れていた。
 
「パパラッチの語源がどこからかお前知っているか。ついで言っとくが、このリビング。玄関から丸見えで、ありゃ写真を撮ってくれと言ってるようなもんだ。女連れ込むときは注意しろよコノヤロー」
「卑怯だぞ!」
「卑怯なやり方で人の親分からごっそり色んなもん奪ったのはどこのどいつだっつーの。ってもう撃ってるし!」
「あれ?不法侵入への正当防衛のつもりだったのに……」
 
 引き金に力をこめたのに、弾はでなかった。もう一回押したがやっぱり発射しなかった。壊れた? いや、確かに今朝の練習ではちゃんと出てたし、きちんと弾は籠めてある。
「さっき渡す前に弾抜いといて良かったぜ。俺はちゃんとした国家の野郎たちと違って回復が遅いからな」
 目の前にぶらぶら弾頭が揺れた。慌ててとる寸前に隠される。まるで奇術みたいだ。
「……で、どうする。物納でも金でもダイヤでもいいぜ。売りさばくルートはいくらでもあらぁ」
「カードでもいい?」
 
「まいど」
 カードを渡すと鉛筆を舐めてメモり始めた。何でそれだけで引き出せるかわからないけれど、方法を聞いてよいことは多分ない。くっそー、後でFBIに捜査させてやると思いつつも、手持ち無沙汰になった。弾のない銃をぶらぶらさせながら、俺はソファに座り込んだ。
「君は国家じゃないの」
「ああ、国家だった期間はほとんどねーな。金がなくなったら、今はこんな感じであちこちバイト生活。たまったら引っ込むの繰り返し。これはこれで結構気楽だな。これでしばらくは遊んで暮らせる。ほれ返すぜ」
「ねぇ、君にとって自由って何さ」
 カードを受け取った。
 やり取りした手に目がいった。妙に筋ばっていた。ささくれていた。俳優やモデルにはありえない手でひたすらアンバランスだ。
 
「……さあ? 三食パスタでシエスタができりゃ何でもいい。そのためなら、何だってやるぜ」
「身内も犠牲になるの」
「どうせ敵も味方も身内だ。どっちが犠牲になっても変わらねーよ」
「そんなの正義じゃない」
「正しくはねーな。確実に嫌われて殺虫剤でも巻かれるな」
 
 イギリスが自分より弱い奴によく向けるいやらしい笑みに似ているが、決定的に違う。何かが違う。
 本人が言うとおり、ちょっと害虫に似ている。決して人間様と目を合わせないところが。
 姿かたちこそ、ハリウッドの小尻が引き締まったタイプの俳優に似ている分タチが悪い。そういう俳優は大抵、色ボケの監督の腰ぎんちゃくだ。俺が嫌いなタイプだ。
 男なら黙って荒野で決闘だ、そうでしょう?
 せいぜい、マカロニウェスタンしかできなさそうな青年は、それでもマカロニのように弾力がありそうだった。食べ物の匂いもするからだろう。
 
「でも、蜂よりマシさ。同じ嫌われるでも、蜜を絞り取られる上に毒針をケツにくっつけたまま一生送るよりはな。俺は、毒針で攻撃するより殺虫剤から逃げる方を選んできたってだけだ」
 
 食べ物にたかるにも、それなりに度胸が必要ってわけか。
 
「じゃーな。チャーオ。冷めないうちにピザ食えよ」
 
 
 
 
 
 
 のろのろパッケージに手を出して食べ始めた。まだ温かかった。
 あの子はピザが好きだっただろうか。あの子に少しでもこのピザの原産国のように自由や正義への無関心さがあったら、今頃はヒゲの大統領がいかに恐妻家だったか笑いながらしゃべくりつつ画面を見ていただろうか。
 
「……おいしい」
 
 電話が鳴った。この着信音はイギリスだ。大西洋をまたがる時差を考えると、うへぇと声に出してしまいそうだった。どこもここも兄と言うのは面倒なものらしい。
 出たとたんに怒鳴られた。
『おいアメリカ!! 何でイタリア兄がお前の家の前で、べそべそに、やばいこわいこわいおれがんばったスペイン!!って泣いてるんだ?! 買ったのか?! 金に身を飽かせて買ったのか?! それとも無理やりなのか?! どうなんだ?!』
 
 内容も手段も大体予想がついた。それ全部そっくりそのまま君がやってることだよね。世界中皆自分と同じだと思わないことだね。
「HAHAHAHA!! また君のお得意の盗撮かい? 慰謝料は覚悟してよね」
 できたら、名誉毀損も加えたいところだ。
「盗撮じゃねぇ! 諜報だ!!  俺はお前をそんな風に育てたつも――」
 
 携帯電話を切って、部屋の隅に放り投げた。ソファに倒れこむ。
 
 兄ねぇ。
 つくづく俺は良い兄にはなれそうもないけど、良い弟だと勝手に育てたつもりな兄はいる。
 
 それは、もしかしたらしあわせなことなのかもしれないと、テキサスをずらして目を覆った。眼鏡の淵からは、ほんのり夏の綿畑が浮かんでいる気がした。
 いつかイギリスに、自分にも一瞬だけ弟がいたことを話せる日が来るかもしれない。
 
 
 
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